心までけてしまう前に

 

 

「ウルキオラ、」

私は唐突に、となりにいた彼の名を呼んだ。

意味など無い。
でも、理由が無いわけじゃない。

彼は冷えた眼差しで私の方向に顔を向けた。

それは私の呼びかけに応えるものじゃなくて、まるで「音」に反応したように。

私のことなんか、見てくれてないみたいに。

 

もう少し私が強かったら、優しかったら、美しかったら。
私の方を、ちゃんと見てくれるかもしれない。

でも、今は無理なんだ。

私は破面の中で一番弱い。

 

「私って、弱いね」

自分でも訳が分からない発言に、きっとウルキオラも私以上に驚いた。

 

「いきなりどうした」

 

そう言ったウルキオラは、ちょっとだけ、笑ってた。
気がした。

 

 

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06/03/17