ねえ、を止めてみて

 

 

呼吸をしているということは即ち生きているということで、
じゃあ呼吸を止めたらどうなるかといえばそれでも決して死ぬことはない。

つまり呼吸をすることと生きていることはイコールでは結ばれない。

 

たまに思うのは「呼吸を止めた場合それに耐えられる時間と寿命は比例しているかもしれない」ということ。

どうでもいいことだと思うかもしれないけれど、私にとっては大発見だった。

 

 

毎日が退屈で窮屈なこの生活にある程度の娯楽は必要。

藍染様が貸してくださる本は面白いけれど、つまらない。

 

だから私は得た知識を新しい娯楽の為に使う。

たとえば今私の目の前にいるグリムジョーを対象にして。

 

 

「…はァ?何言ってんだ」

私が彼に言ったのは「今すぐ息を止めて」の一言。

つまり私流の"寿命の測り方"を実践したかったのだ。

「いいじゃない、どうせ暇なんだし」

「んなもん自分でやれば良いじゃねェか」

そうかその手があったか、と納得しかけた所でふと気付いた。

「それじゃあ実験できない」

「何の実験だ」

「"無呼吸に耐えられる時間と寿命"の関係を調べる実験」

「分かるワケねェよ」

「やってみなきゃ分からない」

  どうしても実践したい私と、どうしてもやりたくないグリムジョー。

私は折れる気など毛頭無く、必死に言葉を組み立ててみたのだけれど、どれも彼には通用しない。

むしろ、彼の言うことが正しいのではないかとまで思うようになってしまった。

 

「じゃあ例えば俺とお前がそれを実践して、俺の方が先にギブアップする。
 でもお前は俺より弱い、つまり死ぬ確率も高い。
 ってことはお前の言い分は間違ってるってことだ。分かったか?」

なんだかものすごく端折った説明ではあったけれど、バカだと思っていた彼の話は意外と説得力があって、
ただ、ただ、圧倒されるだけだった。

 

「グリムジョーって意外と頭良いんだ…」

がアホなだけだろ」

 

 

ん、待てよ?

 

たとえ私の方が死にやすいからって、私が先に死ぬとは限らないじゃない。

いくら私がバカでも、そんなことは分かる。

 

「やっぱり納得できない!」

 

 

ねえ、私の為に

今すぐ息を止めてみて。

 

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

06.11.24